2018.11.03 | 洗浄・不潔強迫
手洗いがやめられない!洗浄強迫・不潔恐怖の治し方
こんにちは。鈴木です。
洗浄強迫・不潔恐怖は強迫性障害の中でも多い種類の一つ。
薬と認知行動療法が有効な治療法として有名です。
特に認知行動療法は最も治療成績がよいと言われています。
しかし、認知行動療法の本を見て「手洗いを短くしよう」と思っても、なかなか改善しないのではありませんか?
その理由はやり方がわからなかったり、ポイントがズレたりしているからです。
そこで今回は不潔恐怖系の洗浄強迫をどのように治していったらよいのかを説明します。
世界中で有効性が実証されていますし、私も何人も強迫の人が改善してきているのを見ています。
実践することで手洗いから解放されますよ。
なぜ手洗いがやめられないのか?
不潔恐怖系の洗浄強迫は自分が「汚い」「ウィルスがいて危険」など不安に思っているところに触ると手洗いをします。
この「汚い」「ウィルスがいて危険」等、頭によぎる不安な考えが「強迫観念」です。
強迫観念が出てくると不安なので「手を洗う」「ウェットティッシュで拭く」などして安心しようとします。
最初は少しですんでいた手洗いが「ちゃんと洗えていないでは」と考え、やめられなくなります。
これが「強迫行為」です。
手洗がやめられなくので、汚いと思う場所を避けるようになります。
そしてキレイでいられる場所(聖域と言います)を作るようになります。
自宅、自分の部屋のベッド、などが典型例です。
聖域を守るために、外出先でついた「汚い」と思っているものを洗うため、帰宅したらシャワーを浴びたり、着替えをしたりします。
入浴後はどこにも触れなくなる人もいます。
また自分だけでなく、家族にも手洗いや聖域を守るように命令するようになります。
これを「巻き込み」と言います。
「これきれいだよね」と家族に聞き家族が「大丈夫だよ」と答えると安心します。
これも巻き込みの一種。
不安は避ければ避けるほど強くなる性質があるため、手洗いや巻き込みをすればするほど悪化していくのです。
不潔強迫克服の基本方法
洗浄強迫を治す手段として「曝露反応妨害法(ばくろはんのうぼうがいほう)」という認知行動療法の一つの技法が有効です。
「曝露(ばくろ)」は、不安なことにさらされることで不安に慣らす方法。
強迫の人は不潔なものに敏感に反応してひどくなっている状態になっています。
そこで、不潔(と、本人が思っている)なものにあえて触り不安を強くさせて、それに慣らしていくことで触ってもなんとも思わなくなってきます。
要するに鈍感にしていくのです。
「反応妨害」は手洗いなど強迫行為しないでいる方法。
不安なものに触っても手洗いをしたら意味がありません。
不安に慣らすために手洗いなど強迫行為はしないようにします。
曝露と反応妨害を組み合わせることで、不安に慣れ改善していくのです。
詳しいメカニズムについてはこちらの記事を参考にしてください。
曝露反応妨害の基本的な考え方を解説 強迫性障害の方は必見です
曝露反応妨害のやり方
では、曝露反応妨害の具体的なやり方について説明します。
まずは以下の①と②の2点をピックアップしてみましょう。
①触るのが嫌なもの、苦手な場所など避けたい場所、触ったたら手洗いをしたくなる状況
触った時の不安の強さを0(全く怖くない)~100(死ぬほど怖い)で点数をつけ加えます。
例:
・ドアノブ 20
・スイッチ 30
・床に触る 40
・トイレの便座 90
②聖域、キレイにしておきたい場所、モノ、部分
これも汚され時の不安の強さの点数をつけます。
例
ベッド 90
ソファ 70
自分の顔 30
自分の部屋にある本 80
洗濯したばかりの服 70
①と②はたくさん挙げておきましょう
どれも怖いと「全部100!」としてしまう人が多いのですが、それはやめましょう。
怖さのランキングをつけるところなので。
わかりにくい時は、実際に触ろうとしてどれくらい怖いかどうか確かめてみてもよいでしょう。
ピックアップしたらいよいよ実践です。
基本的なやり方は①を触り②を汚していきます。
例えば
①ドアノブを手で触り
②その手で自分の顔を拭くように広げていく
といった感じで。
①についてはじっくり触るようにして十分に「汚れた」感覚を味わいましょう。
「ちょっと触ってお終い」にしない方がよいです。
②の聖域もじっくり汚れを広げていく感覚でやりましょう。
①と②の点数が低い組み合わせから始めるとやりやすいでしょう。
一回だけでなく一日に何度も何度も筋トレのようにやり続けるとだんだん慣れてきます。
以前より慣れてきたと思ったら点数の高いものに挑戦していきましょう。
自宅が聖域になっている人はこの記事のようにしてみるのもおすすめ。
どこから始めたらいいの?って迷ったらこちらの記事を参考にを見てください。
24時間、全部汚い状態にしておく
最終的にはキレイと汚いの境目をなくしていくことが大事です。
世界中、どこにいっても24時間、汚いところだらけって。
常に汚い感覚にしておくことで汚れへの不安に慣らしやすくなります。
それは頭の中もそうです。
「これを触ってもキレイだよね」と周囲に聞いたり「これは汚くないんだ」と安心させることはいけません。
これは強迫を悪化させます。
逆に「ばい菌がついて広がっている」と自分が不安に思っていることはすでに起こっている、と考えるようにします。
こうすることで頭の中で安心させることを防ぎ、不安感に慣らしやすくできます。
「全て汚れてどうしようもない」という状況にしましょう。
手洗いについて
①と②の組み合わせをやったら、手洗いをしてはいけません。
手洗いをしてしまうと効果は半減・・・どころかもっと手洗いしてしまう可能性があります。
我慢していた分、もっと洗いたくなりません?
低いハードルでも良いから、きっちり最後までやりきりましょう。
不潔強迫は手洗いを短くする練習ではなく、汚さに慣れていく練習と考えたほうがよいです。
手は洗わないけれど汚いものには触れない、ではよくなりません。
また帰宅した時、食事をする前、トイレの後の手洗いもいけません(怖ければ)。
もし怖ければそれも不安場面の一つとしてリストアップしましょう。
当然入浴の時も手洗いをしてはいけません。
入浴の後は必ず①の何かで全身を汚すようにしましょう。
例:入浴後、トイレ掃除をする
入浴前にだけ汚いものに触っても効果はないので気を付けてください。
「普通の人でも嫌なことをなぜそこまでやらなきゃいけないのですか?」という疑問がでるでしょう。
それについてはこちらでも書きましたが、そうしないとなかなか良くならないのです。
手洗いが以前より短くなったとしても、途中から良くならなくなります。
苦手なものを残した分だけ、後で症状として返ってくる、と覚えておきましょう。
くじけそうになったらこちらの記事も参考に
周囲の対応
家族に対して「手を洗って」とか「部屋にははいらないで」など巻き込みをしている人がいたら、それもやめましょう。
強迫が悪化します。
また家族の方に「『これ触っても大丈夫だよね』『きれいだよね』と聞いてきても「キレイだよ」と答えないでね」
「どんなに手洗いを『一回だけ』と泣いて懇願され、叫び声をあげられても応じないね」と言っておきましょう。
おそらく家族も「本当にこれで治るのだろか?」「もっとひどくなるのではないか?」と不安になるでしょう。
家族の方の価値判断を基準に「これくらい洗ってもよいだろう」とするとダメになります。
そういう意味では周囲も覚悟をもって治療に参加してもらうことが必須です。
強迫行為に応じてくれる家族が「理解のある家族」ではないと思ってください。
苦しい気持ちに寄り添い、一緒に強迫の克服に向けて進もうとしてくれる家族が「理解がある」と言えるのです。
まとめ・良くなった人のインタビュー
洗浄・不潔強迫の治し方は
①汚いものを触り
②きれいにしておきたいモノに広げる
③手は洗わない
「徹底的」ができるかがカギ。
早く良くしたい!って人は短期間でよくするためのプランも用意しています。
覚悟がある人はどうぞ。
短期間で不潔・洗浄強迫を改善するプログラム どうしても治したい人用ですけど
最後までやってしまえば、かなりの人がよくなっていますよー。