2022.10.02 | 強迫性障害全般
強迫症とその家族の方必見 巻き込みへの対応
こんにちは。鈴木(komayamaco)です。
強迫症の人が「きちんと手洗いしたよね」「確認したよね」「何も不安なこと起こらないよね」など周囲の人に確認したり、家族などに手洗いなど強迫行為を強要したりすることを「巻き込み」と言います。
強迫症の人やその周囲の人にとって「巻き込み」を知っておくことは重要です。
巻き込みによって強迫症が悪化するだけなく周囲の人との関係も崩れ、メンタルがやられてさらに強迫が悪化してしまう悪循環に陥ってしまうのです。
そこで今回は巻き込みと対応方法について解説します。
強迫症とその家族の方にとって必須の知識なので覚えておきましょう。
3つの巻き込み
巻き込みの基本タイプは3つ。
①保証を求める
自分が不安なことに対して他人に保証を求めます。
・自分が手洗いをしているなら他人に手洗いをみてもらい「きちんと洗えたよね」と確認
・鍵の確認を他人に見てもらい「鍵かけたよね」と確認
・「これをやっても悪いことは起こらないよね」と確認
周囲が「大丈夫だよ」と安心させるようなことを言うと一時的に安心しますがどんどん症状は悪化します。
何か不安なことがある度に確認するようになり、思い通りに確認してもらえないと正確に確認するよう求め、周囲が疲れ果ててしまいます。
②苦手なものを代わりにやってもらう
手洗いや確認をしていると疲れるため、苦手なことを家族にやってもらおうとします。
・リモコンに触ると汚いと感じるため、家族にリモコン操作をしてもらう
・戸締りの確認をすると時間がかかるため家族にやってもらう
強迫の人が苦手なもの避ける「回避」は悪化要因になるのですが、その手伝いをする形となります。
③強迫行為を周囲に強要する
手洗いや確認など自分のルールを周囲にも強要することです。
・家族に手洗いを強要する
・家族に自分の思い通りの確認をさせる
・家族にしっくりくる返答がくるまで言わせる
巻き込みは家族だけでなく精神科医やカウンセラーへの確認があるので注意をしましょう。
例えば「これをやっても不安なことは起こりませんよね」と曝露をやっても何も起こらない保証を求めるなどよくあります。
これは専門家側も巻き込みであることに気づかず「大丈夫ですよ」と言ってしまい、強迫症の方は専門家が答えてくれるので巻き込みであると気づかないことも多いです。
巻き込みは症状も家族関係も悪化させる
巻き込みは強迫のルールを家族に強要するので家族との関係がこじれやすいです。
巻き込みをすることによって、一時的には安心します。
周囲も「安心させれば訴えが収まるから」と考えて巻き込みに応じてしまいがちです。
しかし、少しの巻き込みで済んでいたものが生活全般に広がります。
巻き込みの精度も上がり100%思い通りに対応してくれるように求めるようになります。
次第に周囲に思い通りにしてもらうことは不可能になってくるので「なぜ自分の嫌なことをするの!何度もいったらわかるの?」と周囲に不満を抱きます。
家族が巻き込まれている場合は要求に答えることができなくなります。
「どうやったら安心させられるのか」ともっと要求に答えようとして悪化したり「単なるわがままじゃないか」と強迫症の方への敵意が生まれたりしやすくなります。
基本的には強迫行為と一緒なので、やればやるほど悪化していくのです。
同居家族なら喧嘩も増えてくるでしょう。
すると強迫症の人は「家族が理解がない」と言い、家族からすれば「こんな生活は耐えられない」となり、関係が悪化します。
巻き込みの止め方
先述の通り、巻き込みは強迫行為と同じで強迫症を悪化させます。
ということは巻き込みは止めなければいけません。
当然いきなり巻き込みを止めることは難しいでしょう。
強迫行為を止める練習と同様、少しずつハードルの低いところから巻き込みをやめるようにしましょう。
よく「巻き込みに応じる回数制限をする」というやり方が紹介されています。
これまで10回くらい巻き込んでいたのを1回にしてもらうとか。
それにより巻き込み回数が減り楽になることもあります。
しかし、強迫行為と同様で1回やりだすと止まらないのが強迫です。
このやり方ではなかなか巻きこみ癖もなくなりにくいです。
決めた回数で終えられない、巻き込み回数は減っても強迫が良くならないことが多いかと思います。
そういう場合はハードルが低いところでもよいので巻き込みはしないでおく練習をした方が改善しやすいです。
家族にも巻き込みを知ってもらおう
強迫症の人に知ってもらいたいのは、巻き込みに応じて優しくしてくれるが「理解のある家族」ではないのです。
巻き込みには応じず強迫症の治療に理解をしめして粘り強く見守ってくれる家族が「理解のある家族」と思ってください。
このため家族にも巻き込みについて知ってもらい、応じないようにしてもらいましょう。
周囲の対応
次に巻き込みを防ぐために周囲はどのように対応すればよいのか?についてです。
まず何が巻き込みかを把握する必要があります。
上述の巻き込みの例を参考に何が巻き込みかを強迫症の方とその家族が共有しておくことと良いです。
いきなり全ての巻き込みを止めることは難しいと思いますので、話し合って一部の巻き込みからでよいのでやめてみましょう。
何が巻き込みなのかわからない時は認知行動療法の専門家に相談してください。
巻きこみを止めることを決めてもなかなか止めることは難しいでしょう。
それに対して周囲の方は「巻き込みはしない!って決めたでしょ!」など怒るようなことはせず「巻き込みには応じられないよ」など穏やかな態度で接してあげてください。
それでも強迫症の方は「今回だけは」など引き下がらないことが多いかと思います。
もしかしたら泣いたり怒ったり、叫んだりすることがあるかもしれません。
そこで「かわいそう」「このまま我慢させたらトラウマになってしまうのでは」など心配になり巻き込みに応じてしまうと、今後さらに巻き込みに応じない時の反応が強くなる可能性があるので注意が必要です。
特に強迫症の家族の方は巻き込みに応じないと決めたら徹底的にやらないと、強迫症の方のしつこさに負けてしまいます。
強迫症を治療するということは、本人だけでなく家族の方もそれなりの覚悟をもってやるようにしましょう。
家族がしてあげるとよいこと
家族の方は強迫症の方が巻き込みをしないでいられたら「巻き込みをしないで頑張れたね」など是非ほめてあげてください。
「巻きこみをしないは当然」のような態度を家族の方がすると、なかなか次を頑張ろうとは思えないものです。
完璧に巻きこみを阻止できなかったとしても、その回数が減ってきたなどでもよいので小さな変化をみつけて認めてあげてください。
巻きこみをしないことは重要ですが、それだけでは強迫症は改善しません。
しかし、巻き込みが少なくなることで家族間とのトラブルが減り、ストレスも減りやすくなります。
やれそうなとこからチャンレジしてください。
どうしたらわからない時は必ず認知行動療法の専門家に相談しましょう。