2017.03.05 | 強迫性障害全般
手洗いや確認を後でやってもよいのか?って疑問にお答えします
こんにちは。鈴木です。
今回はよくある質問。
不安なものに挑戦して、しばらく我慢したら手洗い(確認・繰り返しなどの強迫行為)をやってもいいですか?
後で安心できるって条件なら不安なことに挑戦しても我慢できそうだから、そういうやり方でもよいの?ということでしょう。
例えば、外で汚いものを触り、しばらく我慢して、帰宅したら手を洗う条件でやるとか。
今回はこの疑問に答えていきます。
「後で強迫行為」では強迫性障害を克服できない
結論から言えば、ダメです。
多少良くなったとしても、ぶり返すだけでしょう。
確かに「後で手を洗ってよい」「後で確認してよい」と思うことで、活動範囲が広がることもあるかもしれません。
しかし、強迫性障害が改善することにはなりません。
「後で手を洗う(確認行為など)してもいいから、不安に挑戦する」
は、効果はないのです。
なぜダメなのか?
結局は強迫行為をしていることで、不安には慣れていかないのでダメなんです。
強迫の治療は「曝露」といって、不安にあえてさらしていくことで不安に慣らしていきます。
あえて汚いものに触る(不潔強迫)、灰皿の上でたばこに火をつけて外出(確認強迫)、縁起のわるいことをやる(縁起強迫)、とか。
繰り返し曝露をあえてやることで強迫を克服できます。
ただし、そのためには「手洗い」「確認」「繰り返しの行動」「大丈夫と考える」などの安心・すっきりする役割をもって強迫を悪化させてしまう、いわゆる「強迫行為」をしてはいけません。
不安に慣らす練習なんだから、安心させることはダメです。
強迫行為をやっているうちは改善しません。
だから最後まで強迫行為をせず、不安に慣れていくことを学習することが治療では大事。
それを「強迫行為ができる安心があるからやる」としてしまうと、当然不安感に慣れていきません。
例えるなら、ダイエットのために運動しようとしている人が
「この苦しい運動が終わったら、スイーツを食べていい」
という条件で運動しているようなものです。
不潔強迫の人なんかで、嫌だけど外ではある程度汚いものに触れる!と言っておきながら、帰宅すると手洗いしているとか、入浴前だけトイレ掃除ができるって人ととか、除菌ティッシュで拭いている人とか。
確認強迫だと「車でひいたのでは」と考える人が「帰り道も同じ道を通って確認できるから安心」としてしまうとか。
「強迫行為をするから、大丈夫なんだ」と安心しているので、不安でないし、練習になっていないのです。
我慢の限界まできたら強迫行為をやってもよいの?
似たようなことで「我慢していて、どうしても我慢できなかったら強迫行為をしてもいいですか?」って聞かれることもあります。
もちろんダメです。
手洗いを我慢したら、手を洗いたい気持ちは高まるでしょう。
我慢した後の強迫行為は格別です。
甘いものを好きな人が、ずーっと甘いものを我慢して、夜に食べよう!と思ったら、どうなるでしょうか?
その場はやりすごせても、夜のなると我慢した分を取り戻すかのように、食べたい気持ちが強くなり、食べる量も多くなるのは予想つきますよね。
強迫もこれと同じ。
中途半端に我慢して強迫行為をしてしまうと、強迫行為をしたい気持ちが強くなり、結果として悪化してしまいます。
「行動療法やったらもっと強迫がひどくなった」って人のほとんどは、きちんと不安に直面せず強迫行為をしてしまっていることが原因です。
ハードルの下げ方を間違ってはいけない
以上のことから「後で強迫行為をしてもよい」と思って不安に挑戦するのはやめましょう。
「低いハードルからやっていく方法の一つ」ではありません。
下手をすれば悪化します。
ハードルの低いところから始めるなら、強迫行為をしなくてもやり通せそうなところから練習することがおすすめ。
不安に挑戦しているけれど不安に慣れていかない、って人はやり方がマズいことが多いです。
他にも手洗いは我慢するけれど除菌ティッシュで拭くとかは、ハードルを低くすることにはなっていません。
ハードルの下げ方を間違わないようにしましょう。
どのようにやったらよいかわからない人は、悩むよりも専門家のもとでやった方が早いです。