2026.02.06 | 強迫性障害全般
【強迫症】「治らない」「一生付き合うしかない」は本当?改善をあきらめなくていい理由
こんにちは。鈴木です。
強迫症について調べると、「治らない」「一生付き合うしかない」という言葉を目にすることが少なくありません。
そのため、「もう改善は期待できないのでは」「自分はこのまま生きていくしかないのでは」と感じている方も多いのではないでしょうか。
しかし、この考え方は必ずしも正確ではありません。
強迫症は「治らない病気」と一括りにされがちですが、実際には、重症度が高い場合や、長年悩んできた場合であっても、症状が大きく改善し、日常生活が楽になる人は少なくありません。
世界中でそのような研究結果が出ていますし、私も強迫症の方のカウンセリングをして、たくさん改善している人を見てきました。
それにもかかわらず、「自分は無理だ」と感じてしまう人が多いのはなぜなのでしょうか。
それは、強迫症が治らないと考えてしまうもっともらしい理由が、いくつも語られているからです。
たとえば、
・強迫症は「治らない病気」だと聞いたから
・もう何年も症状が続いているから
・症状が重く、生活に大きな支障が出ているから
・認知行動療法を一度やってみたけれど、うまくいかなかったから
こうした理由に心当たりがある方も多いのではないでしょうか。
ただ、これらは「改善できない決定的な理由」かというと、必ずしもそうではありません。
この記事では、強迫症が「治らない」と言われるときによく挙げられる理由を一つずつ取り上げながら、それが改善をあきらめる必要はない理由について説明していきます。
「もう手遅れかもしれない」「自分は例外かもしれない」と感じている方ほど、一度立ち止まって読み進めてみてください。
改善しようとする希望が見えてくると思います。
1. 強迫症は「治らない」「一生付き合うもの」ではなく、改善する
「強迫症は一度なったら最後、治らないし、一生付き合うしかない」という情報は、明らかな間違いです。
強迫症は十分に良くなるものです。
これは私の希望的観測ではなくて、実際に、世界保健機関(WHO)などの国際的な機関でも、強迫症は「適切な対応によって改善が期待できるもの」とされています。
世界中を見渡せば、深刻な症状から回復し、自分らしい日常生活を取り戻している人は数えきれないほど存在します。
では、なぜ「治らない」という言葉がこれほど溢れているのでしょうか。
理由はいろいろありますが、今回は二つ挙げます。
理由①:目指しているゴールが違う
強迫症が「治らない」と言われる背景には、言葉の受け取り方に大きなズレがあります。
もし「治る」という言葉を、「不安やこだわりが完全にゼロになること」とするなら、たしかにそこまで至らない人がいるのも事実です。
しかし、実はこの「ゼロを目指すこと」自体が、回復を遅らせる大きな落とし穴になっています。
強迫的な考えをゼロにしようと努力することは、自分自身に対して「その考えをもっと強く意識しろ」と命じているようなものです。
「考えないようにしよう」とすればするほど、かえってその考えが頭にこびりついて離れなくなってしまうのです。
また、そもそも「全く不安を感じない人」はこの世に一人もいません。
健康な人であっても、ふとした瞬間に不吉なことや変なことが頭をよぎることはあります。
ただ、その人たちはその考えを「ただの雑音」として聞き流しているだけなのです。
強迫症がよくなるとは、不安をゼロにすることではありません。
不安を「ただの雑音」として放っておき、消そうと戦うのをやめることで、日常生活を自分の手に取り戻していく。
これこそが、目指すべき本当のゴールなのです
理由②:病院に通っていても、強迫症に必要な「専用の練習」をしていない
「何年も病院に通っているのに良くならない」という方は非常に多いです。
それは、強迫症を良くするための具体的な練習(認知行動療法)をしていないことが理由の一つかもしれません。
実は、多くの医療機関で行われているのは、薬による治療や、悩みを聞く「カウンセリング」が中心です。
もちろんこれらも大切ですが、強迫症を改善させるには、それだけでは不十分なケースが少なくありません。
強迫症には、認知行動療法がもっとも効果的な方法と言われています。
しかし、認知行動療法を提供できる場所は、現状ではまだ限られています。
「病院に行っても変わらない」と言われるのは、この認知行動療法にたどり着けていないことが大きな要因です。
また、認知行動療法は、単に「不安を我慢する方法」など、一部分だけが切り取られて誤解されていることが医療関係者やカウンセラーの間でもあります。
このため、専門家抜きで形だけ進めようとすると、多くの場合うまくいきません。
病院にいってもなかかか改善しないのは強迫症に合った方法にたどり着けていないことが、関係している場合が多いのです。
認知行動療法を実践することで、今の状況を変えていける可能性は十分にあります。
2. 悩んできた期間が長くても、回復を諦める必要はない
「20年もこの状態だから、もう今さら変わらない」と感じるかもしれませんが、それは間違いです。
確かに、発症してから早い段階で対応を始める方が、スムーズに改善が進みやすいという傾向はあります。
しかし、これは「長く悩んでいると、もう改善しない」という意味ではありません。
長年続けてきた強迫行為は、いわば非常に強力な「習慣」のようになっています。
何年も同じパターンを繰り返していると、それが当たり前になってしまい、抜け出すのが難しく感じるのは当然です。
ですが、それは「治らない病気」だからではなく、単にその習慣が深く根付いているだけです。
また、よく「悩んだ期間と同じだけの時間がかかる」と言われることがありますが、実際には、これまでの苦しみの期間と同じだけの時間をかけて練習する必要はないことがほとんどです。
もちろん、焦る必要はありませんが費やしてきた時間よりもずっと短い期間で変化を実感できるようになります。
3. 重症度が高いからといって、改善をあきらめる必要はない
「自分は重症だから、軽い人とは違う」と感じるかもしれません。
「これほど症状が激しいのだから、自分のケースは特別で、もう手遅れなのではないか」と考えてしまうのは無理もないことですが、今の症状の重さが、そのまま「これ以上は良くならない」という線引きになるわけではありません。
実際、症状が重いからといって、改善しないということはないです。
たとえ一日のほとんどを強迫行為に費やしているような深刻な状態でも、そこで起きているのは「不安を感じたときに、つい、いつもの行動をしてしまう」というパターンの繰り返しです。
この「いつもの行動」を少しずつ変えていけば、状況は良くなっていきます。
また、「認知行動療法は症状が軽い人だからできるのだ」という誤解もありますが、実際には深刻な状態から回復するためにも活用されている方法です。
もちろん、いきなり高いハードルに挑むわけではなく、今の自分に合わせた範囲から始めて、少しずつ慣らしていくことができます。
重症度は、改善しないことの証拠ではありません。
一歩ずつ進んでいくことで、深刻な状態からでも穏やかな日常を取り戻すことは十分に可能です。
4. 以前、認知行動療法がうまくいかなかったとしても、あきらめる必要はありません
「前に認知行動療法をやってみたけどダメだった」という経験があると、「自分にはこの方法は向いていない」と思ってしまうかもしれません。
ですが、過去うまくいかなかったからといって、次もうまくいかないとは限りません。
うまくいかなかった理由は、どれか一つとは限りません。
その時はたまたま、設定したハードルが今の自分には高すぎたのかもしれませんし、やり方や進める順番が合っていなかったのかもしれません。
あるいは、当時の心の準備や体調や環境が整っていなかっただけ、ということもあります。
私の経験でも「あの時はできなかったけれど、今ならできる」という方はよくみます。
これまでの経験だけで「自分には無理だ」と決めつける必要はありません。
専門的なサポートを受けながら、もう一度取り組んでみる。
そうすることで改善することもあるので検討してみてください。
まとめ
今回の内容を整理すると、以下のようになります。
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不安をゼロにしようと戦わず、「自分の生活を取り戻すこと」を目標にする。
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悩んできた期間や症状の重さが、これからの可能性をすべて決めるわけではない。
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一度うまくいかなかったとしても、それが回復をあきらめる理由にはならない。
「一生治らない」という言葉に縛られて、これからの自分をあきらめてしまう必要はありません。
よくなっていく可能性を捨てずに、今の自分に合った形で一歩ずつ進んでいきましょう。
