2025.02.07 | 強迫性障害全般
4段階方式で強迫症を克服?「不安でたまらない人たちへ」の実践ポイント
こんにちは。鈴木です。
今回は強迫症に関する本のレビューをします。
紹介する本はこちら。
「不安でたまらない人たちへ やっかいで病的な癖を治す」
ジェフリー・M・シュオーツ(著)
草思社
この本ではカリフォルニア大学ロサンゼルス校の医学部チームが認知行動療法をベース開発した「4段階方式」が紹介されています。
強迫症を含め摂食障害、アルコール依存、抜毛などにも応用できると書かれています。
強迫症の人で読んでいる人が結構いてこの本どうなんですか?とよく聞かれるので本の簡単な内容と私なりに考えた実践のポイントを紹介します。
4段階方式とは以下の通りです。
第1段階 ラベルを貼り替える
第2段階 原因を見直す
第3段階 関心の焦点を移す
第4段階 価値を見直す
それぞれ説明していきます。
第1段階 ラベルを貼り替える
ラベルを貼り替えるというのは、不安な考えや衝動に対して「これは強迫観念だ」「強迫行為だ」と考えることです。
例えば「鍵をかけていないのではないか?」という不安な考えではなく「しつこい強迫観念」、何度も確認をしてしまうのは性格やクセではなく「強迫行為」。
こんな風にラベルをつけます。
要するに
・強迫観念と強迫行為だと気づく
・客観的に自分の思考と行動を見る
練習なのかなぁと。
これで強迫がなくなるわけではないけれど、積極的に強迫に抵抗する下地が作られると書かれています。
第2段階 原因を見直す
この段階は強迫の原因は大半は脳にあると考えることです。
なぜ強迫観念はしつこいのか?消えないのか?の答えは脳が原因ということ。
「鍵をかけていないのでは?と考えるのは、実際にその可能性があるのからだ」と考えているのかもしれません。
それを「鍵をかけていないのではという考えは脳のエラーメッセージだ!」と言い聞かせます。
浮かんできている不安は、脳のエラーであり現実的な不安ではないのだと理解するようにします。
第3段階 関心の焦点を移す
関心の焦点を移すというのは、強迫行為をしたくなったら他の有意義な活動をやるということ。
音楽を聴く、遊ぶ、スポーツをするなど建設的で楽しいものをやります。
そうすると強迫行為をしたいという衝動が薄れていくのです。
本書では少なくとも15分間は他の活動をすることを一つやり方として紹介しています。
ここでのポイントは「嫌な気分を追い払う」ではなく「症状があってもなくても、自分がやりたきことをする」ということ。
これによって、脳のエラーの修正がされてくるとのことです。
第4段階 価値を見直す
最終段階は強迫観念が言っていることを額面通りに受け取ろうとせず、関心をもつ価値がない無意味なものだと考えるようになることです。
これは特別なことをするというより、第1段階~第3段階を実践していくことによって自然にできるようになり、価値の見直しが出来ることで第1~第3段階がスムーズにできるようになるとのことです。
他に4段方式を用いて、人生に応用するためにはどうしたらよいか?家族はどうすべきか?過食への応用なども書かれています。
この本の活用方法
この本の活用方法について私なりに考えたポイント4つをお話します。
①曝露反応妨害の基本を学んだ後に読むことがオススメ
まずは基本的な強迫症の曝露反応妨害法が書かれている本を見た後で、補足的な意味合いで参考にするのが良いかもしれません。
外国の方が書かれている本ですし、図などで説明されているわけではなく、300ページ以上あります。
段階的にやっていくためにはどうしたらよいか?など書かれていますが、とてもサラッとした説明となっています。
強迫症や曝露反応妨害の基本的なところは他の書籍の方がわかりやすいでしょう。
②実践の参考にするところをみつける
基本をおさえた上で、この本を読むといくつかヒントになることがあります。
「強迫観念とラベルをつける」「脳の機能障害であると考える」など、他の書籍にも書いてあることですがそれほど強調されているわけではありません。
どんな心持ちでいればよいのか?の一つの考え方として使えるところではあります。
また一般的な曝露反応妨害の本には強迫行為をしないでいる間何をすればよいか書かれていないものが多いです。
それを第3段階として本書に紹介されています。
このように、他の本にではそれほど強調されていない考え方や行動の仕方を学んでいけると思います。
③細かいところを読んでみる
人によっては本書を見た時に「不安は強迫観念で脳のエラーであり、他のことをしろってことでしょ」くらいにしか思わないかもしれません。
4段階方式の「やり方」だけを抜き出せば単純なので一度曝露反応妨害を学んだ方ならそれほど役に立つと思えないでしょう。
しかし、本書の細かいところを見ていくと意外とそれ以外のテクニックや大事な考え方ものっています。
例えば第1段階で紹介されていたのはテープに強迫観念を拭きこんで何度も聞くやり方が紹介されています。
これはイメージを使った曝露です。
単に「強迫観念だ!」と言い聞かせるだけでなく、不安なことを録音し聞いたり不安な方を選ぶようにすすめていたりするなど曝露的なことが書かれています。
その他にも強迫観念だと言い聞かせても「それが強迫観念でなかったらと考えると不安」などよく強迫症の人が疑問に抱くようなことへの考え方ものっています。
テクニックだけ参考にしようと思うとこの辺りはスルーしてしまいがちですし、頭に入っていない人も多いかと思います。
細かく読んでみることをおすすめします。
④強迫行為我慢するだけにならないようにする
4段階方式だけでは強迫行為をしないという反応妨害メインの方法になりやすいかなぁという心配があります。
強迫観念が浮かんできた時に強迫行為を我慢する、のような。
これだとどうしても「強迫観念は脳のエラーと考えて我慢して他の行動をする」の方だけに目がいきがちとなります。
強迫症の改善にはあえて不安なことについてチャンレンジする曝露が必要なことが多いです。
しかし、本書ではそれほど詳しくは書かれていないという印象です。
最初にも書きましたが、一般的な曝露反応妨害を理解した上で、取り入れていくとよいのかなと思います。
まとめ
今回は書籍「不安でたまらない人たちへ やっかいで病的な癖を治す」を紹介しました。
以下の4段階方式
第1段階 ラベルを貼り替える
第2段階 原因を見直す
第3段階 関心の焦点を移す
第4段階 価値を見直す
を実践することで強迫症の改善に導く方法です。
個人的は他の書籍で強迫症や曝露反応妨害の理屈を学んだうえで、参考にした方がよいかなと思います。
書籍を読んだだけではうまくいかない人は認知行動療法の専門家に相談しながらやっていきましょう。